懐かしい船旅を、想い出してください。
こんにちは!この度「復刻駅弁」企画で大会に参加する、函館「みかど」の田中と申します。
皆さんは、「青函連絡船」というと、どんなイメージがありますか?
演歌に出てくるようなちょっと寂しいイメージでしょうか?若い方だと、ご存知ない方もいるかもしれませんね。
青函トンネルができる前は、北海道から本州へ渡る手段は、連絡船か飛行機しかなかったので、私は高校を出て、連絡船が廃船になるまで、本州へ行く際にはよく利用していました。
現在も残っている、函館駅近くの「函館桟橋」です。
連絡船として運行していた「摩周丸」が係留されていて、中は青函連絡船記念館になっています。
こちらは、2004年に新駅舎になった函館駅。「みかど」の駅弁も、数多く販売しています。
青函連絡船の旅は、本州まで4時間ほどかけた船旅なので、出発前に桟橋でお弁当を買って乗り込みます。 私もそうでしたが、みんなどことなくワクワクして楽しそうでした。
まさか自分が、その弁当の作り手になるとは思っていなかったので、これも不思議な縁ですねえ。
船が出航する時には、ドラの音が響いてテープが舞い、新しい旅立ちに胸躍らせる乗客と、見送り客の歓声が行き交う・・・そんな船着場ならではの独特の雰囲気が大好きでした。
今回お作りするのは、船旅の楽しみのひとつとして、道内から旅行へ出かける方々に愛された「想い出の駅弁」です。
当時の光景を思い浮かべながら、楽しんでお召し上がりいただけるとうれしいです。
とはいっても、最初に「青函連絡船の函館桟橋で販売していたお弁当を、当時のまま再現してほしい」というお話をいただいたときは、果たしてできるのだろうか?と、正直悩みました。
過去のお弁当の資料も保管されておらず、とにかく手探りの状態からのスタートでした。
社内の資料をあれこれひっくり返してみたところ、まず古びたパンフレットを見つけ、その中で、函館桟橋で販売していたお弁当を探し、ようやく掛け紙に連絡船が描かれた「紅鮭弁当」を発見したのです!
素材の味を生かした、素朴なおいしさをお楽しみいただける「紅鮭弁当」。
北海道といえども、紅鮭は当時、高級品だったようです。
青函連絡船が運航していた頃の、時代の匂いを感じる情緒豊かなお弁当です。
もう1つ復刻する「つぶ貝弁当」は、昭和11年の創業後、まもなく販売を始めたという話で、今も形を変えて販売していますが、、こちらも当時の形で復刻しよう!ということになりました。
日高産の歯ごたえのあるつぶ貝を使った「つぶ貝弁当」。
こちらは「こんな食材があるんだ!」と、興味を持っていただけたらうれしいですね。
当時は、函館近郊でも獲ることができ、串刺しにして屋台などで売られていました。つぶ貝は、漁師さんのお酒のつまみで、庶民の味としてこの辺りで親しまれています。
お弁当が決まったのは良いですが、いざ作ろうにも、レシピが残っていません・・・。
そこで、当時これらのお弁当を作っていた人がいないか、声をかけて回りました。
すると、定年になり、現在もお手伝いで来ていただいている方が、当時も弁当を作っていたとのこと。
「作り方は、体で覚えている」という、頼もしい言葉をもらい、何とか当時の味を再現することに成功しました!
今残っている「つぶ貝弁当」も、当時は若干味付けがちがったそうで、本当に味覚と腕の記憶で再現したお弁当です。
さて次の問題は、掛け紙ですが、長年お付き合いしている印刷屋さんにダメもとで聞いてみたところ、偶然にも当時の製版フィルムが残っているということで、こちらも実現できました。
偶然が重なってここまで辿り着きましたが、いやはやこれでひと安心です。
現地で調理する星澤調理長。
私たちもこうした機会をもらって、貴重な体験ができました。
会場で、皆さんに喜んでいただけるのを楽しみにしています!